「─ …んー、ここはもうちょっと黄色を濃くした方がいい、かな?」
あっという間に放課後になったあと、夏芽と彩と一旦別れてから、部活へ来てキャンバスに向かう。
本当、…相変わらず落ち着くな。
絵の中で、空に向かって一生懸命に伸びるその花を一生懸命描いていく。
誰もいない静まり返った部屋で何もかも忘れるように、筆を動かす。
突然、ガラッとドアが開く音がして振り返ると、
「…あ、夢空見つけたっ!」
昨日会ったばかりの、嬉しそうな笑みを浮かべる、琉空がいた。
「琉空!?何で、…」
肺炎で入院してるはずじゃ…。
「ん?だから言ったじゃん、すぐ会えるよって。もう昨日よりも結構前の時点で、今日の退院は決定してたし。」
「…だからって、何でここにいるの?」
「一応先生に明日から来ますって挨拶しといた方がいいかなあって思って学校来たんだけど、たまたま美術室の前通ったから、結衣ちゃんが夢空は美術部って言ってたからいるかなあって思って覗いてみたの。」
目を見開いて驚いている私に対して、まるで子供みたいに無邪気に笑いながら話す琉空に力が抜けていく。
確かに結衣が私の事を美術部だ、って言っていたけど…。
「…美術部は夢空しかいないの?」
「家で描いたり自由な感じだから、部員はいるけどここで描いてるのは毎日私だけ。」
「ふうん、…ねえ、俺ここで夢空が描くの見てていい?」


