「え、な、渚沙!?」
ビックリして目を見開きながら叫ぶと、勢いで倒れてしまった渚沙が膝をついた状態に起き上がる。
だけど、その顔をみてまた驚いた。
「左頬…腫れてる…!!」
黙りこむ渚沙を引っ張って立たせると、158cmの私と同じくらいの目線になる。
でも、その可愛い顔は明らかに左頬が腫れていた。
「早く冷やさないと…!」
「…大丈夫だから、大丈夫。出してくれて、ありがとう。」
焦る私を諭すように、初めて聴く声が耳を伝って、流れ込む。
…渚沙の声、初めて聴いた…。
思ったよりも高くはなかったけれど透き通った落ち着く声。
左頬に添えていた私の手をそっと下ろすと、弱々しく微笑む。
「…私は、大丈夫。夢空ちゃんは何も心配しないで。今日はたまたま閉じ込められちゃったけど、大丈夫だから。」
…大丈夫な訳がない。その左頬もここにずっと閉じ込められてたのも、理緒のせいでしょ?
そこまで考えて、違う、と思った。
…何も言えなかった私達のせいでもあるんだ。
「いいから、保健室!行くよ!」
「えっ…放っておけば治るから大丈夫だって…」
渚沙の手首を掴んで保健室へ歩き出そうとすると、後ろからそんな声が聞こえる。
そんな時、ハッといい考えが浮かんで、クルッと振り返った。
「渚沙さ、理科の推進員だよね?」
「え?…そうだけど。」
「今日、私1人で仕事やったの。だからさお詫びって言ったら何だけど保健室、一緒に来てくれるよね?」


