「よし!合格、みんないい感じだね〜」
「ありがとうございます」
無事、このレベルをクリアしたみたいで、体育の先生が褒めてくれた言葉を理緒が嬉しそうに受け取る。
その瞬間、授業の終わりを告げるチャイムが校舎中に鳴り響いて、そのまま日直の号令で1校時が終わった。
「あ〜、疲れた!やっぱ1校時から体育って疲れない?」
「めっちゃ疲れる!ていうかもう集団行動とかよくない?あんなの理緒だけが楽しいやつじゃん。」
荷物を持っていつものように夏芽と彩と合流して教室まで歩いていると彩の問いかけに夏芽が顔をしかめながらそう言う。
「だって学級副委員長って美穂ちゃんじゃん?議長なのになんで理緒なの?」
「思った、それー。」
2人の会話に、ただ曖昧に微笑みながら歩く速さを少しあげる。
…何も言わずに気持ちなんて押し殺して。
階段をのぼって廊下を歩くと、すぐに教室が見えて、夏芽と分かれて彩と席に向かう。
その途中で、理科の担当の先生に後ろから声をかけられた。
「美浜、理科の推進員だったよな?ちょっと遅れるけど2校時は理科室で実験だから、休憩時間中に鍵開けてプリント配っといてくれるか?」
…あ、そういえば私理科の推進員だったな…。
もう1人の推進員は、…、ああ、渚沙か。
ってことは私1人で全部やるってこと?
うんざりした気持ちを悟られないように「分かりました」とだけ言って、体育着から急いで制服に着替える。
「うわお、夢空大変だね、頑張れぇ〜」
手をヒラヒラ振って他人事のように言う彩に、ため息を吐きたくなるのをグッと堪えた。
…手伝ってくれるわけ、ないよね。
元々期待していなかったけれど、少し苦しくなった胸を押さえながら彩に「行ってくる」とだけ伝えて教室から飛び出した。


