「3年3組女子、1列横隊に集合!」
4月だからかまだ程よい気温の体育館。
女子と男子に分けて行われている集団行動中、クラスのリーダー兼学級役員の理緒のかけ声で動く私たち。
「右向け右!」
理緒の言葉一つで、全員が足を揃えて右を向く。
…、この集団行動はまるでクラスそのまま。
リーダーの一言で私たちは向く方向を変えて、言われた通りに動くんだろう。
「右向け右」と言われたらきっと全員で一斉に今みたいに右を向いて、歩く。
そして、リーダーの指示に反する人がいたらはじき出される。
「いい感じかなあ?今日はアイツいないしねっ!」
理緒が高い声をあげてキャッキャッと喜ぶのと正反対に体温が冷めていく感覚に襲われた。
…未だに渚沙は授業にすらも姿を現さない。
どこからともなくクラスの女子で顔をあわせるけど、誰も何も言えずに目を伏せた。
上機嫌の理緒をこれ以上機嫌悪くさせるのは避けたい。
みんな、考えが一致したのか理緒軍団が「理緒の指揮がいいからだよっ!」とおだてたのを聞いて、その言葉にうんうん、と頷く。
「えー、そんなことないってば〜。じゃあ、テスト受ける?」
「うん、そうしよう!」
満更でもなさそうに言ったセリフに、クラスの女子全員で同意して、テストを受けるために先生を呼んだ。
なんとなくいい感じに移動や方向転換ができたら先生がテストをみて次のレベルに進む仕組み。
…と言っても、女子は早く進んでいて、これに合格したら残りは行進のみになるんだけど。


