そうしている内にいつの間にか鳴ったチャイムと同時に理緒が教室へ入ってくる。








相変わらず不機嫌を表すように、眉間に皺を寄せて自分の席へつく理緒にクラス全体がきっと同じ疑問を浮かべた。







…渚沙は、どこだ?








理緒と一緒にいたはずの渚沙の姿がどこにもない。








次の本鈴のチャイムがなったら、遅刻になるはずだから、何が何でも来ると思うのに。










クラス全員が座っている中、真ん中の席の渚沙の机だけがぽつんと空の状態で残っている。









嫌な、予感がする。








「…理緒、…な、渚沙は…?」







「…は?何あんた、アイツが気になんの?」








理緒軍団の1人もそう感じたのか、前の席から恐る恐る聞き出そうとすると、








片手で頬杖をついた理緒が低い声を出しながら睨む。







「…あ、いや、っ来ないからどうしたのかなぁって。」






「さあ?どっかに逃げたんじゃない?そろそろあたしと同じクラスとか恐れ多くて無理でしょう?」









ニコッと微笑んで言う理緒に、「そ、そっかぁ、そうだよねっ」とだけ言って、前を向いてしまったその子に、小さくため息をつく。









…このクラスの最高権力者は理緒で、理緒の機嫌を損ねるものは許されない、ただそれだけだ。







それ以外は周りと違くならないように、特に何も目立たないように、








溶けて、透明の水のように。






それが、このクラスの掟。