「…あ、そうだ。結衣、いつぐらいに退院できそう?」







気になってはいたんだけど、お母さんは何も教えてくれないからなかなか知れずにいた質問をすると、んー…と、結衣は考える顔をする。








「えっとね、確かお医者さんがあと1週間くらいって言ってた気がする!念のため!」








「もう元気なんだけどねっ」なんて笑いながら言うから、「そっか。」と私も自然に微笑んだ。








その瞬間、視界の端にいた琉空がなぜか驚いた顔をしたけど、よくわからなくて首を傾げる。








どこかに驚く要素あったかな…?








「んー、早く中学校行きたい!まだ中学生になったばっかりなのになんで入院なのかな!」








無邪気に背伸びして言う結衣に、単純に羨ましいと思う。







…学校が楽しい、行きたい、なんて思ったのは何年前だろう。








私のクラスにだけは、琉空も結衣も来てほしくない。








…あんなに息苦しいクラスには。







「早く元気になって、学校、来れるといいね。」






「うん!部活も入りたい!私ね、お姉ちゃんみたいに美術部とかで絵は描けないから…バレー部がいいかなー…」








顎に人差し指を当てながら考える結衣の姿が可愛くて、思わず、また、ふふっ…と笑った。








この空間で、結衣と琉空と話しているといつの間にか私の心に塗られた真っ黒な絵の具が、まるで浄化されたように穏やかな気持ちになる。








…明日もきっと今日の繰り返しで、またすぐに黒く塗り潰されてしまうんだけど、今だけはただただ純粋に、心地が良かった。