「あ、妹のお見舞いなんだよね?結衣ちゃん、いるかな?」








表情をくるくる変える琉空が思い出したようにポンと手を叩いて、そのまま病室のドアを開けてくれる。








お礼を言って先に入れば、使用感のあるベッド2つだけが誰もいない状態であるだけだった。








「…あ、いないね、どこ行ったんだろう?」








続けて入ってきた琉空の疑問に私も首を傾げていると、








「お姉ちゃん?」








後ろから私よりもちょっと高い可愛らしい声が聞こえて、振り返ると案の定、結衣がいた。









「…結衣、どこ行ってたの?」







「ちょっと散歩!ようやく歩けるようになったから嬉しくて、つい。」








えへっ、ていう効果音がつきそうなくらい、イタズラが見つかった子供みたいに無邪気に笑う結衣に少し息を吐く。








「もう、無理しないでよ?ちゃんと安静にするときは安静にしてて。」






「はーい!…で、お姉ちゃん今日はどうしたの?部活は?」






「結衣の着替え、持ってきたの。部活は休んだけど。」








元気よく返事した結衣の質問に答えると、途端に眉と目尻を下げて、しゅんとした姿が目に入る。








「…ごめん、私のせいでお姉ちゃん部活で、絵描けなかったんだよね?」







「結衣のせいじゃないから。部活に出れなくても私の部は厳しくないし絵はいつでも描けるから大丈夫だよ。」








ぽんぽんと私より少し低い位置にある頭を撫でると、パァァ…と表情が明るくなった。








…本当、私と違って、結衣は表情豊かで愛くるしい。








私も結衣くらい素直に感情を出せたら少しは変わったのかな。








…今更そんなこと思っても何も変わらないか。








そんな時、後ろから「ふっ…!」と笑われる声が聞こえて、ハッとする。








そうだ、琉空が後ろにいたんだった…!









「夢空と結衣ちゃん仲良すぎっ…!!一体どんだけ仲悪いのか、なんて思ってたら普通にいいお姉ちゃんじゃんっ…!!」







若干笑って、語尾が聞きずらくなってるんだけど、なんでそんなにおかしいの!









私と結衣は、確かに親の態度とかでギクシャクする時もあるけど、








…歳の近い姉妹だもん、普通に話すし、仲が良いか悪いか、と聞かれたら仲が良い方に入るだろう。









「…この人お姉ちゃんのお知り合い?」






「知り合いっていうか、さっきそこでたまたま会ったっていうか。」






「天川琉空です、こんにちは結衣ちゃん。」







「美浜結衣です、お姉ちゃんがお世話になっています。」









私、琉空にお世話になったつもりはないんだけど…?








お互いに頭を下げながら挨拶する2人の台詞に少し違和感を覚えながらも、とりあえず何も言わないでおく。