「…天川くんは、」






「琉空でいいって言ったじゃん、俺、苗字呼びされんの慣れてないし、あんま得意じゃないんだよね」






とりあえず質問しようと思って、出した名前に眉を下げてそう言われる。







…慣れていないとか、そういうものなのかな?








そこまで言われると断るのもなんか変か、と思って大人しく従うことにする。








「じゃあ、琉空は何年生?」






「ん?中3。てか、その制服、北星(ほくせい)中でしょ?俺もそこだよ。」







「は?」






サラッと言われて流しそうになってしまったけれど、頭にクエスチョンマークが浮かんで混乱する。








確かに、制服のまま直行して来たから、北星中って分かるんだろうし、同い年くらいだと思ってたから中3ってことにはさほど驚いていない。








でも、同じ学校で同じ学年って、…うちの学校にこんな人いたっけ…?








琉空ほど顔が整っていれば、女子に騒がれても無理ないと思うのだけれど。









それとも彩とか夏芽が騒いでいた話を興味がなくて右から左に流していたのかも知れない。










「ねえ、俺何組か知ってる?まだ新学期始まってから一回も学校行けてないんだよね。」








「…知らないよ、琉空のことだって今知ったんだし。」








目を輝かせて言ってきた琉空の言葉に肩をすくめる。







…私のクラスのメンバーすらまだ正確に覚えてないのにわかるわけがない。







でも、私のクラスは男子の出席番号順は"い"が頭文字の人が1番だった気がするから、きっと"天川"の琉空は3組ではない、かな。







「…でも新学期から一回も学校に行ってないってなんで?」






「あー…、新学期始まる直前に、肺炎にかかっちゃったんだ。」






「…の割には元気そうだけど?」







「あ、心外だなあ。これでも結構重症な方で2週間も入院したんだからね?最初の2日とか40度越えの高熱だったんだからね?」







今度は琉空が肩を竦めて、困ったように微笑む。







…肺炎なら結衣も一緒だし、最初のうちは苦しそうだったから、琉空の言っていることはきっと事実だろう。







同情は、しておく。