「琉空、もう来てたんだ。」
「夢空よりも早く来たの初めてかもしれないね。」
「ああ、4組の担任の先生帰りの会の話長いもんね。」
苦笑いをしながらキャンパスを取り出して、絵の具の用意をすると琉空が絵を覗き込んでくる。
「…もう完成しそうだね、夢空早い。」
「そうかな、最近家でも描けるようになったからかも。」
琉空のセリフに肩をすくめて控えめに笑う。
…家で決して描けなかった絵が、最近描けるんだ。
「琉空は、夏休み中に引っ越すんだっけ。」
「うん、て言っても学区内だから転校とかはないけど。」
楽しそうに笑った琉空を見て少し嬉しくなりながら筆に色を馴染ませる。
…琉空は、前に百合さんと住んでいた家を椿さんが管理していてくれたみたいで、そこで一緒に住むことになった。
椿さん曰く「唯一全部知っていたんだからこれをやるのが責任で、最低限私にできることだったから。」らしい。
本当に、百合さんも椿さんも優しい人だなって思う。