でも、琉空がそう放った途端、すぐに否定の言葉が聞こえてくる。
「そんなこと思ったこと一度もない。…忘れていても、そんなこと一回もないって言えるわよ。実際に日記とかの証拠もあるし、それに何より今の私も…、貴方のことを大切にしたいって思うから。」
澄んだ百合さんの声で紡がれる言葉に、鼻の奥がツンとして目が潤む。
「…まだ私は貴方のことを全部は分かりきってないけれど知りたいと思う。これからもっと知っていきたいと思う。…今も昔もきっと変わらない。…琉空、貴方のことが大好きよ。」
その瞬間、目から涙が零れ落ちた。
背中から小さな嗚咽が聞こえて、きっと琉空も泣いている。
目の前の椿さんも下を向いて涙を拭っていた。
…やっと、やっと通じた。8年越しの想い。
ふわり、と風に乗ってみんなに降り注ぐ。
「…母さん、」
「…ん?」
その時琉空が静かに口を開いた。
「…一緒に、住もう?」


