「琉空、お誕生日おめでとう。」
揺れる睫毛が一瞬ピクリと固まって、私を凝視する。
微笑んで伝えた言葉は時を止めたように琉空の元へ宙を舞った。
「…なんで、夢空知ってるの…」
「…ごめんね、椿さんにこっそり聞いちゃってたんだ。」
驚ききってポツリと零した琉空に答える。
どうしても今日だけは琉空に会いたかったのも。
どうしてもここに来たかったのも。
全部このため。
「…ありがとう…、ありがとう夢空…」
震える声で嚙みしめるように言った琉空が口角を上げる。
それにつられるように私も微笑んだ。
…本当、琉空の名前って七夕生まれにぴったりだと思う。
『天川琉空』
天の川の周りに、たくさんの輝きを散りばめた空のように。
きっと琉空が生まれた頃の空は、すごく綺麗だったんだろう。
「琉空は、愛されて生まれてきたんだよ。」
琉空がもし疑うなら私が胸を張って答えてあげる。
琉空は、愛されて生まれてきた。
私がそう言うと、また吸い込まれそうな瞳を大きく見開いたけれど、すぐに目を細めて微笑ってくれた。


