「すっごく小さい頃に、…ここをお父さんに教えてもらったの。街に近づくにつれて段々星は見えなくなるけど、ここだと星がたくさん見えるんだぞ、って。……なんて、最近はちょっと忘れかけてたんだけど。」
どちらかといったら田舎の県の、街から外れたこの丘。
街灯も人工の光も少なくて、キラキラと懸命に輝いている光が空から伝わる。
さっきまで雨が降っていたけれど、雲がいつの間にやらなくなったようで、一面に星を見渡すことができた。
「…本当、星空が綺麗だね。」
柔らかい声でそう呟いた琉空にそっと視線をうつす。
…前に琉空と見た夜空には一番星だけしか見れなかった。
『周りに誰もいなくなっても俺は俺だって、堂々としてたいんだ。』
その時に琉空が言った言葉。
…うん、確かにそれも大切かもしれない。
でも、やっぱり誰も1人でなんて生きていけないから。
「…琉空とこの前見たときは、一番星しか見れなかったけど、今は一番星だけじゃなくてたくさんの星が空にいっぱいあるね。」
「…うん、」
「…全部人工の光で隠れていただけで、本当はみんな近くにいたんだよ。一番星はひとりぼっちなんかじゃなかったんだ。……星も人もきっと同じ。誰も1人では生きていけなくて…、いつだってどんな時だって誰かがそばで支えてくれてる。」
そう言うと、琉空とゆっくりと視線が交わる。
「…何回でも言うよ、琉空は1人なんかじゃない。1人になんてさせない。…どんな時だってそばにいるよ。」
強くまっすぐと、琉空を見つめる。
…でも、すぐに見惚れてしまうくらい綺麗な笑顔を浮かべてくれた。
「ありがとう、夢空。…そのために連れてきてくれたの?」
お礼を言って聞かれた琉空の質問に首を横に振る。
それもあるけど、今日は。今日だけは。
こんな星の綺麗な夜にどうしても伝えたくて。


