───────────────────……
「ただいま…。」
久しぶりに重い体を引きずって家に入る。
琉空を家まで送り届けた後、1人で悶々と歩きながら考えてしまうのはやっぱり戸惑った百合さんの顔と、琉空の怒りに隠されたどうしようもない悲しみだった。
「あら、夢空おかえり。」
のそのそと歩きながらリビングのドアを開くと、お母さんと目が合って微笑まれる。
……前までお母さんには私が見えてないんだって思ってた。
でも、それが確信になったことも、完全に私を記憶から消されたこともない。
「…夢空どうしたの?ご飯出来てるわよ?温かいうちにみんなで食べようって思って…、」
お母さんが私の目を見て、動きを止めたのがわかった。
それでも、どうしても涙が目から溢れ出すのをやめることなんて出来なくて。
温かい家族を知った。お母さんの優しさを知った。
それなのに。その全て、自分の存在全て、忘れられてしまったら?
「…夢空、何か…、あった?」
お母さんの言葉に頷く余裕すらもなくてただただ嗚咽してしまう。
ねえ琉空。
君はどれくらい今まで辛かったの。


