この後も仕事があるらしい峰沢さんと分かれて琉空と2人、帰り道を歩く。








「…ねえ、琉空?」







「ん?」







「…お母さん、この街にいるんだってね。」








「…らしいね。」








間を空けて弱々しく微笑んだ琉空に、やっぱり違和感を覚える。









…情報が貰えたのにどうしてそんなに悲しそうに笑うんだろう。









「…琉空、どうしたの?」








「…どういう意味?」








「なんか…寂しそう。」








ハッキリ言葉にして伝えた途端、目を見開いた琉空がまっすぐ私を見る。









でも、すぐに柔らかく微笑んだ。










「やっぱ夢空にはバレるかぁー…」








「バレるよ…、琉空のこと案外見てるし。」







「それは照れる。」









黙った私に、琉空がハハッと笑うと、下を向いて口角を上げたまま話す。









「…母さん、本当に旧姓使ってるんだな、って。それに、手帳に書き込まれていた黒髪のロングヘアとか、そういう特徴。俺、8年も会ってないから全然わかんなくて。…今更ながら時の壁…、感じたんだ。…そんなことにめげちゃうのも弱いなって。」









俯いているからあんまり琉空の表情は分からないけれど、きっとまた悲しそうに笑っているんだろう。








そっと琉空に近づいて、立ち止まる。







「…前に琉空が言ってくれたでしょ?俺たちはまだ子供だ、って。…琉空の言う通り私たちはまだまだ弱いんだよ。自分で思ってるよりずっと弱い。…だから、弱くても大丈夫だよ。弱いことは恥じゃないよ。」








私たちはいつだって幸せになりたくて。









幸福を求めていて。








どんな時でもその方法を探している。









きっと幸せの道を進みながら、だんだん強くなっていくんだ。









だから、無理に強くならなくていい。まだずっと先でいい。










「…大丈夫だよ、私は琉空のそばにいる。」












私の言葉にまた驚いたような顔をした琉空が、とびっきりの笑顔を見せて、頷いてくれた。









……私たちは、まだ幸せを求めてもがいて足掻いている最中だ。