一瞬だけ微笑んだ峰沢さんから出たセリフに、心臓の鼓動が速くなる。









…この街に、この近くに百合さんがいるはずってこと。









「すみません、私は探偵ではないのでそれ以上は何も出来ないのですが…。」








「十分です!ありがとうございます…!」









峰沢さんがメガネをクイっと中指で上げて申し訳なさそうに言うので、礼をしながら感謝する。









…この街にいるって分かっただけで本当に十分すぎるくらい。









「…ありがとうございました、本当に。」








今まで黙っていた琉空も立ち上がってお礼を言うと、峰沢さんが微かにまた微笑む。









「早く見つかるといいですね。」








「…はい。」









頷いた琉空の肩をトントンっと叩く。







…なんか落ち着いていて優しい大人の人だな。









そう感じながら琉空を見ると、少し寂しげな目を手帳に向けていた。









…どうしたんだろう。