「…ねえ、理緒。それ誰に聞いたの?」
「…別に、噂で聞いただけって言ったでしょ。」
ツンっとそっぽを向く理緒に、少しだけクスッと微笑んでしまう。
あの2人が言いふらすなんて信じられないから、きっと理緒の話は嘘。
多分、結衣から話を聞き出したんだろう。
…何ていうか、不器用だなあ。
素直に言ってくれてもいいのに。
「…ありがとう、理緒。」
温かい気持ちになりながらお礼を言うと、照れたように「…いいのよ、夢空なら。」って言葉が返ってくる。
…でも、まあこの不器用さが理緒らしさなんだろう。
「…それで、何を手伝えばいいの?人探しなら、私の知り合いに情報通がいるんだけど、紹介する?」
長い睫毛の瞳が私を見て、提案された言葉を頭で理解する。
…情報通、の人。場所の特定までいかなくても、本の少しだけでも場所を絞れるかもしれない。
「その人、どんな人…?」
「その人は、本当に口が堅くて人柄も良いの。安心して頼っていいと思うけど。」
理緒が真面目な雰囲気でそう言うってことはよっぽど信頼できる人なんだろうな。
…理緒が助けたいって言ってくれているなら、それを信じてみたい気もする。
「…うん、じゃあお願いしたい、かな。」
「…ほんとね?…じゃあ、詳しいことはまた後で話す。」
私が頼んだ途端本当に嬉しそうな顔を浮かべた理緒のセリフに、ハッとする。
…次の授業がすぐに始まってしまう時間。
理緒に「わかった。」と了承して自分の席に急いで戻る。
…後で、琉空にも報告しよう。
そのまますぐに先生が来て、授業を始めたけれどなんとなく軽い気持ちで臨むことができた。


