「何、その目。言いたいことあんの?」







今日もまた、同じことの繰り返し。





授業と授業の間の10分休み。






授業中はさすがに理緒も大人しくしているんだけど、休み時間は渚沙に嫌がらせをし始める。






今の状況はどうやら、渚沙が歩いていたところに理緒が足でつっかからせたんだから避けれるわけもなくて派手に転んでしまったらしい。






文句ありげに転んだ体勢のまま見上げた渚沙の視線に顔を歪ませる理緒。





「足がたまたま当たっただけなのに、何?私が悪いの?つーかそっちが謝れって感じなんだけどお?」








両手で頬杖をついて微笑みながら首を傾げる理緒に凍りつくクラスの雰囲気。





…早く、早く授業が始まれ。





授業が始まったら一旦この状況は凌ぐことができる。





口をギュッと結んだまま何も言わない渚沙を自分の席に座りながら見つめた。






「あんたさぁ、私、あんたの声、聞いたことないんだよね?知ってる?"すみませんでした"って言って謝るんだよ?」






無言の渚沙に苛立ったのか、さっきよりも声を低くして言う理緒に耳を塞ぎたくなる。





…もういいじゃん。





渚沙が可哀想だとも思うのに誰も何も言えなくて。






ただ時間が過ぎるのを待つしかできない。






「…聞こえないの!?謝れって言ってんの!!」





痺れを切らしたように、大声をあげた理緒に体を震わせながらも渚沙は無言で、クラスもずっと冷めきった空気のまま。





その瞬間、授業開始のチャイムが鳴って渚沙が自分の席へ逃げるように帰ったのを確認した理緒がクラス中に響き渡るように舌打ちをした。