部屋に入って鞄と一緒にさっき受け取った袋を放り投げるように床に置いて、そのままベッドに倒れこんだ。
「…結衣結衣って、…私、夢空なんだけどなぁ…」
お母さんに私が見えてないってことなんてとっくに知ってる。
私が目の前にいても、所詮"結衣の姉"にしかみえなくて、自分の娘として認識しているのかもわからないことだっていつものことだ。
ボソッと呟いて、仰向けに体勢を変え、部屋の電気の光を遮るように目元を腕で覆う。
…このまま何もかも忘れられればどんなに楽か。
全ての記憶が消えて、新たにやり直せたら。
そんなバカなこと何回考えたんだろう。
人前で泣くこともできない性格で、だからと言って気持ちの整理も追いつくわけがなくて。
ただただ黒い感情を心にグシャグシャに塗りまくって、それを隠すように顔だけで笑う。
心との矛盾が苦しすぎて、息をしているのに肺まで届いていない錯覚がして、なんでここにいるのかもわからなくなる時があって。
それなのに、なんで私笑っているんだろう。
変わらない毎日で変える勇気もないくせに、見て見ぬフリしかできない自分に嫌気がさす。
恐れていてはなにも変わらないのもわかっているのに、私は怖いんだ。
…私の行動で今の居場所がもっと苦しい場所へ変わってしまうかもしれないことが。


