「違う…っ、言ったじゃんっ、私はっ、琉空が困ってたら苦しんでたら、…っ助けるって。」
久しぶりに出した声は、予想以上に震えていた。
…泣いてしまいそう。
誰よりも泣きたいはずの琉空が微笑むから。
その代わりに私が、泣きたくて泣きたくて仕方ない。
「…大丈夫なんだ、今更母さんに会いたいとも椿さんに何かを言いたいとも思わない。だから、どうもしなくていい。全部今話したのは過去なんだ。…俺は、なんの感情も持ってないよ。」
琉空の宥めるような口調にだらしなく首を横に振る。
違う、そんなの、哀しすぎる。
私だって、お母さんが結衣にしか笑いかけないこと、慣れていると思っていた。何の感情も持たないって。
……それでも心のどこかでは、ボロボロに傷ついてた。
自分の感情に見て見ぬ振りをするのは、哀しくて、苦しい。
「私は、琉空を助けたいっ…!」
「…そう言ってくれるだけで、俺は嬉しい。だから、満足。これでくだらない身の上話は以上!聞いてくれて、ありがとね。」
何で、届かない。
琉空が遠くへ行ってしまいそう。
蜃気楼のようにどこかへ消えて、いなくなってしまいそう。


