お母さんに、「ちょっと出かけてくる!」とだけ伝えて、家を飛び出す。
ねえ、どうして?
遅い時間だったのにお邪魔しても、琉空にしか家で会わなかったのはどうして?
『お母さんとかにもちゃんとありがとうございましたって伝えといてねっ!』
『…うん、わかった。』
自然な返答だったけど、答えるのに少し間があったのはどうして?
『夢空は、偉いね。諦めずに頑張って。…俺とは大違いだ。』
あの時微かに切なそうに儚く微笑んだのは、どうして?
私は、本当にバカだ。
思い返せば幾つでも気付く要素はあったのに。
光が当たる場所には必ず影が出来るって、1番わかっていたはずなのに。
私は、琉空に助けてもらってばっかりで、琉空の叫びに気付けなかった。
必死で助けたいって思って伸ばしていた手は、これっぽっちも君のことを掴めていなかった。
ねえ、琉空。
君は美術室に1人で、どんな顔をしながら考え事をしていたの?