涙色の空をキミに。











「じゃあ、俺帰るね。夢空も勉強頑張って。」







「うん、またね。」








そんな他愛ない話をしていたら、そばにあった鞄を肩にかけて立ち上がった琉空にひらひらと手を振る。








そのまま出て行った琉空を見て、さっき空いていた窓に近寄って鍵を閉める。









…最後までいたのは私だから戸締りしないと。









全部窓が閉まっているか確認するためにグルッと美術室内を見渡すと、さっき琉空が座っていた席に一冊の手帳が置いてあるのが見えた。










「…琉空の忘れ物?」









あんなに手元に置いてあったのに忘れるってどんだけおっちょこちょいなんだ。









少しバカにしながらも、明日渡してあげようと思って、その手帳に手を伸ばしたところで開いてあったページの文字を見てしまって一瞬動きが止まる。









『今日も母さんの情報は無し。旧姓を使ってる可能性が高いかな。』







『椿さんの会社に行ってきたけど門前払い。俺、そんなに嫌われてる?』









…な、に…これ…?









意味があんまりわからない文章に、目を見開く。








一文程度の短い日記みたいになってて、所々の日付の後に書き込まれている。









お母さんの情報…?それに、椿さん…って、誰?








考えれば考えるほどわからなくて、頭の中に謎が膨らみだす。










これ、でも琉空の字だよね…?







なんとか理解しようと釘付けになろうとした瞬間、完全下校のチャイムが鳴ってハッと我にかえる。









…今日は部活がないから部停にはならないけど、彩達を待たせてたんだった!









とりあえず手帳を閉じて急いで鞄の中に入れて、キャンパスを持ちながら美術室を出る。









先生が後はドアの鍵を閉めてくれるんだよね…?










美術室の電気を消したところで昇降口に向けて全力疾走した。