長い廊下の一番奥、右手に302と書いてある。
カチャ
面会謝絶と書いてある、そのドアから花瓶を持った年配の女性が出て来た。
その人と目が合う。
「叶多の生徒さん?」
「……はい」
「叶多の母です。
ごめんなさいね……まだ会うことが出来なくて」
きっと何人もの人にそう言っているのだろう……。
申し訳なさそうに頭を下げる姿が、私には重く感じた。
「……私……」
「杏……」
後退りする私の腕を、ミカが掴む。
怖かった……。
ここに来ることが……。
私のせいで先生がこんなことになって……。
どう言ったらいいか、どう謝ったらいいか……。