「杏ー、ミカちゃん来てくれたわよー」
一階からお母さんの声がした。
コンコン
後を追うように、ドアがノックされた。
「おっじゃま~、杏、調子どーよ?」
私が停学になって、ミカは毎日のように来てくれる。
授業のノートと、差し入れを持って。
「今日はねー、泉屋の豆大福、買ってきちゃった~」
じゃーん、というように、袋を高々と上げた。
いつもの笑顔と、大声で、毎日元気にやってくる。
私を元気づけようとしているのが、よくわかる。
「毎日ありがとね」
泉屋なんて、遠回りなはずなのに……。
「どってことない、もうすぐ停学も明けるじゃん」
「うん……学校どう?先生のこととか……」
学校で先生のこと、どう言われてるのか、本当は聞くのが怖かった……。
「ん……それがさ……」
口ごもるミカ。
「何かあったの?」
「うん……」