「杏」 その時、後ろから聞き覚えのある声。 「……先生」 井関先生が立っていた。 以前もこんなことがあった気がする。 「遅刻だぞ、急げよ」 担任らしい言葉。 私は無視して、コンビニを出た。 「杏!」 学校とは逆方向へ行こうとしていた私の腕を、先生が掴んだ。 「触らないで!」 私は先生の手を振り払った。 「……」