この街に珍しく雪が降った。
そして雪から雨にかわった午後。
午前中で学校を終えた、私と入江先輩は街中を歩いていた。
「杏、昼どうする?何か食べてく?」
「そうですねー」
私は先輩と居ることに少し慣れていた。
同じ学校の生徒や他校の生徒に、先輩と一緒に居るところを見られても、なんとも思わなくなっていたから。
交通量の多い大通りにある横断歩道。
信号待ちのため、立ち止まる人々。
行き交う人達で傘がぶつかる。
傘の外にそっと手を出す。
ポツポツ
手のひらに落ちる雨。
寒い冬に降る雨は、意外と好き。
「ファストフードも飽きたし、杏何がいい?」
先輩は私に聞くため、傘の中を覗く。
「うーん」
答えようと先輩を見上げた。
その肩の向こう____……。
横断歩道の向こう側に、井関先生が見えた。
ドキン……
ドキン……
先生……
ドキン……
ドキン……