時折、口調が変わることにも気づかない亮輔さんは自分の過去を呆れ気味に振り返りながら話してくれた。


でも、そんな彼を変えたきっかけは本当に何なんだろう?



「それがさ、スーツアクターの出会いなんだ。友達とたまたまやった夏休みのアルバイトがデパートのヒーローショーのスーツアクターだったんだよ。でも、俺は変な怪人でさ。そのとき、ヒーローをやってたのは俺よりも遥かに年上の人でさ。正直おじさんだったんだ。でもその人ヒーローのスーツを着た途端、本当に変身したんだ。軽い身のこなし、ピタリと合った決め台詞。魅せられた。中の人がどんな人かを知っているから余計にカッコ良く見えたんだ。それに子どもたちがキラキラした瞳であの人を応援してる姿がたまらなく羨ましかったんだよな」



どうぞと、あまりに興奮して話す亮輔さんにそっと水筒のお茶を入れて渡す。一気飲みで飲み干す。


でもふと思ったら間接キスだ。意識してるのは私だけだろうけどなんだかやっぱり恥ずかしい。


チラッと彼を見るとそんなことには気づきもしないで空になったコップにお茶を足していた。



「お茶ありがとな。で話の続きなんだけどって花菜ちゃん、何か面白かった?」



「いや亮輔さん、本当にヒーローショーが、スーツアクターが好きなんだなって。なんだか、子どもみたいで」



子どもってなんだよってトンって身体をぶつけられる。お弁当箱を置いていたときは距離があったのに今はこうやって触れ合える距離にいる。


おかしいな、私この人のこと本当に苦手だって思っていたのに初恋の人だって気づいたからかな。


ドキドキ、意識してる。