ただ、君の隣にいたいだけ

2時間の待ち時間を終えてようやく迎えたヒーローショー。明海が起きるまでずっと握られた手。


久しぶりに男の人に手を握られてちょっと舞い上がったことは置いといて。亮輔さんのさっきの言葉ってやっぱり私のことを好きだってことだよね?


で、でも私そんな亮輔さんのこと知らないし、ここに来てからいいところを見せた記憶もないんだよね。


チラリと視線をやるともうヒーローショーのお姉さんに釘付けの亮輔さん。な、何よ。ただの女好き?


確かにあのお姉さんは可愛いかもしれないけどさっきの私への言葉は何?それとも誰にでもあんなこと言ってるわけ?


あーもう、なんで私もこんなにイライラしてるんだろ。



「・・・あれなら花菜ちゃんのほうが可愛いし、合ってる。花菜ちゃんの声ってすごい通るし、あの子よりあの服装似合うと思う」



「は、はい?な、何言ってるんですか?」



「だってあの声はきっと後ろまでは届いてないし、あの子自身が楽しんでないと思う。子どもと直接顔を見て話をする役には適してない。影マイクもあの子が担当だろうけど花菜ちゃんのほうが合ってるに決まってる」



「あ、あの意味がよく分からないんですけど」



ブツブツとお姉さんを見ながら呟く亮輔さんに首を傾げるとごめんごめん、専門用語だったと軽く交わされる。


いやいや私が聞きたいのはそんなことじゃなくてあのお姉さんと私を意味もなく比較してるところなんですけど。



「そうだ、花菜ちゃんちょっと耳貸して」



お姉さんに夢中の明海を挟んでそっと私の耳元で亮輔さんはこう呟いた。



「あのヒーローたちが実は裏でドロドロの恋愛模様を描いてたら面白いと思わない?」