ただ、君の隣にいたいだけ

明海のため。確かにもう会わない人にわざわざ叔母と同居人ですなんて説明する必要もないか。それにそんなこと言うと余計に説明とかしなくちゃいけないわけだし、返ってややこしいよね。


それなら別に否定する必要もないか。どうせヒーローショーは親子連ればかりだし、気分だけでも明海に親子の気分を味合わせてあげたほうがいい思い出にもなる。


って近い、顔近いから。



「ちょ、ちょっと顔、近いですよ」



「うん、でも花菜ちゃんの鼻の頭に虫が止まってるから」



「えっ、やだやだ。早く取って、やだー」



顔をかなり近づけられて焦ったけれど虫なんて嫌だ。気持ち悪い。ありえない。


顔を左右に揺する。早く飛んでけ。飛んでけ。まだ飛んで行かないのか亮輔さんの手がどんどんと伸びて私の顔に触れそうになる。思わずキュッと目を瞑る。フニッと摘ままれた鼻の頭。



「あっ、ごめん。虫かと思ったらホクロだった」




もうやっぱりこの人、嫌だ。そんなやりとりをおばあさんが見て明海に『仲良しのパパとママ』だなんて言ったことも聞かなかったことにする。




本当、からかわれてばかりな気がする。