ただ、君の隣にいたいだけ

この日から本格的稽古が再開された。新春ショーの練習の後、しばらくは休暇期間だったけれどこの日から当日の3月25日までは毎日、雨でも練習がある。


みんな、ファミリーパークのラストショーを絶対に成功させたいから。



「潤、花菜ちゃん、もっと足上げろ!」



亮輔さんの穴埋めをしようと必死の野村さんはいつもピリピリとしていて練習はここ最近、かなり悪い雰囲気。


亮輔さんは頭ごなしに怒鳴りつけてもちゃんと指導をつけてくれたけれど野村さんはまだそこまでの実力を兼ね備えてはいない。

だからこそ、必死になるのもわかるけれどメンバーの中には指導もなく怒鳴られることに不満を持つ人たちも出てきた。



「じゃあどうすればいいんですか?俺たちだってまだそんなにアクター歴もないのに怒鳴られるだけ怒鳴られてもわからないですよ。下野さんはちゃんと指導してくれたのに」



そして、練習再開から一週間。とうとうチビくんが痺れを切らして野村さんに啖呵を切ってしまった。さすがにそれはヤバイとみんなでフォローに入ったのも束の間、野村さんがチビくんに掴みかかった。



「お前に言われなくても俺だって分かってる。俺が亮輔より劣ってるなんて。あいつはプロだ。ちゃんと養成所まで行って卒業して基礎から学んだプロだ。今回はどうしても最後だからとヒーローショーに参加してただけで違うんだよ、あいつと俺らは。あいつと同じものを俺に求めるな。俺らは所詮あいつら本物の真似事にしかすぎないんだから」



あいつはプロだ。野村さんの言葉が胸に突き刺さった。今まで亮輔さんがここにいたのはファミリーパークの最後のショーだったから。本当なら養成所を卒業してすぐにスーツアクターになれたかもしれないんだ。


亮輔さんの居場所はここじゃない。
でも、でも野村さん一つだけ違う。