ただ、君の隣にいたいだけ

「しばらく、東京に行ってくる」

あの妊娠騒動から数日後、亮輔さんはその言葉だけを私に残し、荷物を纏めて出て行ってしまった。東京に行くっていうことはもしかしたらスーツアクターの仕事を受けに行くのかもしれない。



でも、だとしてもどうして何も話してくれなかったのかな。亮輔さんが出て行って一週間後、アクシーズの練習が始まった。今週末はクリスマス。だけど亮輔さんからの連絡は一切ない。


すっかり塞ぎ込んでしまった私を励ますかのように週末のイヴはアクシーズでクリスマス会をすることにしてくれた。



「亮くんのことだからちゃんと決まってから言いたいんじゃない?大丈夫よ。きっとアクターの仕事、決めてイヴには現れるに決まってるわよ」



綾羽さんが言ってくれた言葉は本当に支えになった。うん、きっと亮輔さんのことだから仕事を決めて笑顔で報告してくれるよね。それを信じていよう。


でも、クリスマスも年末年始も携帯を常に握りしめてはいたけれど一度も亮輔さんからの着信はなかった。一度だけ私からお正月にメールを送ったけれどその返事もない。


ただ事務所にだけはどうしても都合をつけることが難しいから新春のヒーローショーには出られないという連絡だけがあったらしい。



「もう本当に仕事に就いてて忙しいのかもしれないね。月末には新しいヒーローのお披露目会が東京で毎年行われるからもしかしたらもうその撮影に参加してるのかもしれないよ」



そっか、連絡もできないくらい亮輔さんは夢を叶えて忙しいのかもしれないんだ。いいこと。だってずっとテレビで活躍するスーツアクターになりたいって話してたもん。


私になんて連絡する暇もないくらいに忙しい日々なんだ。