ただ、君の隣にいたいだけ

ステージ上には可愛い格好に身を包んだ綾羽さんが立っている。綾羽さんがパステルカラーや目立つ色の服を着るのも目印になるため。


ヒーローショーの詳細なんて今まで全く知らなかったな。だって一年前までは絶対、幼稚園の先生になりたいと思ってた。何ヶ月か前は夢も希望も枯れ果てて廃人だった。


そんな私がマスクを付けてとはいえ、大勢の人の前に立つなんて想像も出来なかった。ましてやそれまで全く興味もなかったヒーローショーに出るなんて。



「花菜ちゃん、そろそろスタンバイいくよ」



愛梨さんに呼ばれてすぐに行きますと返事をして誰もいなくなった控えの中を見渡す。たった30分の一回公演。いつもなら午前、午後とあるヒーローショーも花火の関係で今日は一回きり。


失敗なんて絶対に許されない。次にここにみんなが戻ってくる頃には達成感と笑顔いっぱいでありますように。



「それでは、お姉さんが『せーの』って言うからみんなは大きな声で『ナイトレンジャー』って呼んでね。じゃあ一度練習するよ。いくよ、『せーの!!』」



「「ナイトレンジャー!!」」



ステージ裏でスタンバイをしてるとたくさんの子どもたちが呼んでくれている声が耳に入ってくる。


さっき本番前に愛梨さんとチラッとマスクを付ける前に観客席を見に行ったら本番1時間前にも関わらずたくさんの親子連れでいっばいだった。


朝からみんな早起きして会いにきてくれたんだ。期待は裏切れない。次に綾羽さんの掛け声で子どもたちがナイトレンジャーを呼んでくれればいよいよショーの始まり。


緊張してきたけど頑張る。