短編・偽物の恋愛

心境を語っているように、物が散らばっている部屋にある、テーブルに置かれているのは中身のない大量の睡眠薬のシートの空。


眠れないのか、はたまた自傷行為にも似た自殺行為を繰り返しているのか。

今の彼女を見れば後者だと普通に分かるだろうが…。

「祐二…」


そんな部屋で、ぽつりと消え入りそうな声で呼んだ海斗ではない別の人の名前。
それに答えたのは自分自身の聞き慣れた嗚咽で、涙がクッションを濡らすことなど気にもとめずに美紀は、ただただ泣いた。