そんな時に何もかも見透かしているような凛とした声で問われ、心臓が跳ねる。


唐突な質問は慣れているのだが、言葉も知能も沙織には負ける為に、例えそれが純粋な問いかけだとしても、沙織に自分の意見を言うのは少々いたたまれない気持ちになるのである。

「私は人に親切にすることが優しさだなんて到底思えなくて、だから実の思えなくて、貴方の言動は理解出来なかったわ。昔からね」

『…そうか、でもね、それは僕も同意見だよ』

「それは当たり前よ。当然だもの、人が人を理解出来ないのは。」

…一蹴されると、分かりきってはいたが、自分と同じ年齢の女の子に、饒舌な程に含み笑いを浮かべたまま、そう切り返されたことに、男の僕より沙織が優位に立ったようで何故か悔しくなる。