「ツム以外に渡すつもりはない。俺、ツムにアクセサリーの一つも買ってやってないだろ。それで親父が、これをツムにあげたらどうかって言い出したんだ。だから気にしなくていい。結婚指輪はお揃いのものを買おう」



図々しいけれど、ずっと見つめていると小さく輝くダイヤモンドが私の指になじんできているような気がした。



「ところで返事は?」



巧先生を見ると、珍しく不安そうな表情をしている。ちょっと強引で、いつだって自信満々な感じなのに。


「私は今すぐにだって結婚出来ます。結婚したって夢を叶えることは出来るし…」



巧先生はやっと笑顔になった。

そして私の母のほうを向いて頭を下げる。


「お母さん、ツムと結婚させてください」


「巧先生、頭を上げてください。娘をよろしくお願いしますね」


母は少し涙ぐんでいるようだった。

私はそっと墓石に向かって言った。

これからは丸山家の一員としてよろしくお願いします、と。


大先生も嬉しそうな表情をしている。