センセイの好きなもの

これから一体何が起こるのか、変にドキドキしてしまう。



「こんなところで申し訳ないんだけど、俺は母さんにもちゃんと聞いてほしくてさ。親父もツムのお母さんもちゃんと聞いてください」



そう言うと巧先生はジーンズのポケットからゴソゴソと、小さな箱を取り出した。


これ…。
テレビドラマで見るようなジュエリーが入っている箱だ…。


巧先生が私に見えるようにそれを開くと、シンプルな一粒石のダイヤモンドリングが入っていた。
太陽の光を反射して、眩しいくらいにキラキラ輝いている。



「紡実、俺と結婚してほしい。ツムには夢があるから待つつもりでいる。これは親父が母さんと婚約するときに渡した指輪で、ずっと母さんが持ってたものなんだ。サイズは直してあるから」


巧先生は私の左手を取ると、薬指につけてくれた。
サイズを聞かれたことも言ったこともないのにピッタリ。どうして分かったんだろう。



「私、こんなに大切なものを貰ってもいいんですか?お母様と大先生にとって思い出の品なのに」