センセイの好きなもの

お母さんが生きていたら、こんな私を巧先生の彼女として認めてくれたかな?

その前に付き合うことを許してくれたかな?

巧先生がお母さんは料理上手だったって言ってたから、教えてもらいたかったな…。



そんなことが頭の中を渦巻いていたとき、急に小突かれて目を開けた。


「ツム、日が暮れるぞ」


「小突かなくてもいいじゃないですか」


次はお盆にお邪魔します、と心の中で呟いた。


「みんな昼メシまだでしょ?ここら辺は美味いもんが多いからさ、何か食って帰らない?」



海の近くだから海鮮がいいなぁ。新鮮で安いイメージがあるし、買って帰りたいな。


「その前に!ちょっとみんなに聞いてほしいことがあるんだ」


「お前、こんな暑いところじゃ熱中症になっちゃうぞ」


確かに立っているだけでも汗をかく暑さだ。天気もいいし、全国的に真夏日だと天気予報で言っていた。
でも吹き抜けていく風が気持ちいい。



「すぐ終わるって。ツム、こっち立って」


墓石を真ん中に、私と巧先生は向かい合って立った。