「何か言ってましたか?」


「紡実の居場所を知りませんか、って。知らないと答えたわ。そしたらお帰りになったけど」


一番最初に母が私の前に現れて、逃げるように引っ越したあとも、母は同じようにここに来て百合子先生に私の居場所を聞き出そうとしたんだ。
今もしこの近くに母がいるとしたら、すぐに見つかるか、尾行されるかも知れない。



「でもお母さん、すごくやつれた感じだったわ。久しぶりに会ったからかも知れないけど…。疲れた顔してた」


「きっとまたお金がないとか借金があるとか、そんなことですよ。いつだってそう。金の無心のために私を探し出すから…」


母が再婚すると言って私を置いて行ったあと、本当に再婚したのか、今も続いているのかは知ったことじゃない。
だけど、最初に現れたときから今もきっと夜の仕事をしていると思う。いつも身なりがそんな感じだし、まともに暮らしているようにも見えない。
そもそもちゃんと働いていたら、それなりの暮らしは出来るはずなのに。いつもいつも私を探し出してまでお金をせびる。