旅館の中には土産物売り場があり、浴衣姿の人たちで賑わっている。
よく考えたら鍵は編集長が持っていて、部屋に入れないわたしは、土産物売り場でウロウロしていた。
「悪い、平瀬。オレが鍵持ってたな」
いつの間にか30分経っていて、背後から聞こえてきた声にビクッとする。
完全に気が抜けていた。
「あ、編集長ゆっくり出来ました?」
何気無く振り向いて、目は編集長に釘付けだ。
だって、浴衣姿の編集長は、この上なく色っぽかったから。
意外と締まった体つきで、さりげなく見える胸板は程よく筋肉がついている。
それに髪は濡れたままで、オールバックにしていた。
それが似合い過ぎるほど似合っていて、甘いルックスがより強調されている。
「ああ、ゆっくり出来たよ。ありがとう、平瀬」
「そ、そんな…。わたしこそ、編集長に出張に連れてきてもらわなかったら、こんな所には来れなかったんですから」
ヤバイよ。
やっぱり、この出張はヤバイ。
この気持ち、いつまで隠し通せるだろう。

