「楽しんでる?」
それは予想外の言葉だ。
「ああ。平瀬は、オレといても変に壁を作らないし、一緒にいて楽だよ。だけど、それだけ気を遣ってくれてるんだろ?だから、平瀬こそ息抜きしてこいよ」
ズルイ。
こんな二人きりな場所で、そんなことを言う?
ますます、『好き』を止められなくなるじゃない。
「じゃあ、二人で行きませんか?30分ごとに交代で」
「でも、それじゃあゆっくり出来ないだろ?平瀬が入れよ」
「入りません。編集長が入らないなら、入りません」
すると、根負けした編集長がため息をついたのだった。
「分かった。そうしよう。じゃあ、平瀬が先に入れよ」
「はい、そうします」
よし、これでいいのよ。
気を遣ってるのは、わたしの方じゃない。
編集長だ。

