「なるほどなあ…」
「お風呂だけじゃなくて、景色も二人だけのものって素敵じゃないですか?」
我ながら、いいフレーズを思いついた気がする。
対象読者層を考えれば、かなりキャッチーだと思うんだけどな。
自己満足で編集長を見ていると、突然顔を向けられた。
その距離があまりに近くてドキッとする。
「よし、それでいこう。ここの風呂、うちも予約してあるんだ。17時から1時間だから、平瀬が行ってこいよ」
「えっ?予約してあるんですか?」
「ああ。実物を見ていた方がいいだろ?後で感想を聞かせて」
そう言って編集長は、再びパソコンへ目を移したのだった。
「編集長が入ってください。明日だって、須賀さんの原稿を見るんですよね?編集長だって、息抜きをしたらいいのに」
わたしは、編集長と二人でいられるだけで満足。
景色のいい露天風呂も、二人でいられるこの部屋には負けるのだ。
「ありがとう、平瀬。だけどオレは、今日十分楽しんでるからいいよ。お前の方こそ、気疲れしてるだろ?」

