そのため息に気付いた編集長が目を丸くする。
「そんなに仕事がしたいのか?感心するな」
「ええ。そうですよ。仕事がしたいんです」
もうヤケクソだ。
少なくても『部下』としては、編集長に好きでいてもらいたい。
それには、仕事を頑張るしかないのだった。
だけど、『恋愛』からは遠のきそうだ。
「じゃあさ、ここのフレーズなんだけど、何かいいものないか?」
小さく手招きをされて隣へ行くと、パソコン画面に露天風呂の写真と紹介文が見えた。
「説明文は考えたんだけど、見出しがなぁ。いいフレーズが思い浮かばなくてさ。これ、貸切の混浴露天風呂なんだよ」
「貸切の混浴露天風呂!?」
なんて素敵なの!
もし、ここに編集長と二人きりで入れたら、どんなにロマンチックだろう。
「おい、平瀬聞いてるか?」
つい妄想にふけっていると、イライラした声をぶつけられてしまった。
「あ、すいません。えっと…、『自然の景色も二人占め』って、どうですか?語尾はハートマークにして。お風呂から見える山の景色が、とても綺麗ですから」

