ベンチは大人二人だとギリギリの広さで、少し動くだけで腕が当たりそうだ。
出来るだけ当たらない様にしようと体を小さくしていると、それに気付いたのか編集長が立ち上がった。
「ごめん。ここ思ったより狭いな」
苦笑いを浮かべる編集長に、自然と手が伸びて腕を掴んでいた。
「大丈夫ですから。わたし、全然イヤじゃないです。だから…」
だから?
また座ってって、言いたいの?
だけど、言える勇気がなくて、そのまま俯いてしまった。
これじゃあ、編集長も戸惑うだけに違いない。
すると、掴んでいた手を離されて、そのまま握られた。
「編集長?」
ビックリして見上げると、編集長は優しい笑顔を浮かべている。
「こんな感じかな?ここに来るカップルは。イメージ湧いたか?と言っても、オレとじゃ雰囲気出ないか」
笑いながら言った編集長は、次には手を離した。
気まずくなった雰囲気を、変えてくれようとしたんだろうな…。
これもきっと、優しさだと思う。
だけど、わたしには余計に切なかった。
編集長が好きだから、握られた手の感触がいつまでも残りそうで…。

