「天気がいいな。出張日和じゃないか」
「そうですねぇ」
金曜日の午前、皮肉なくらいに空は晴れ渡っている。
汗ばむくらいの暑さで、半袖を着たくらいだ。
今日は、とうとうというか、ようやくというか、編集長との出張の日なのだった。
「よし!行くか。一泊旅行に」
編集長は、わざとらしく言うと、二人分の荷物をトランクに入れた。
「一泊旅行って、皮肉ですか?」
「当たり前だろ?噂されてることくらい知ってるよ」
やっぱり、知ってたか。
どおりで、言葉の端々にトゲを感じると思った。
早々と車に乗り込んだ編集長の後について、助手席に乗り込む。
そういえば、絵美さんに初めて会った日以来、まともに会話をしたのは今日が初めてだ。
なんだかんだで、仕事が忙しかったもんな。
「編集長、運転変わりますから」
出張先まで高速を使って4時間。
それほど遠くでないにしても、決して近い距離でもない。
運転だけでも、かなりの負担になる。
だから言ったのだけど、編集長は涼しげに答えたのだった。
「ありがとう。でも大丈夫だよ。慣れてるから」
「はい…」
車が軽快に走り出す中で、ドキドキと胸を高鳴らせる。
やっぱり、編集長は頼りになる。
いつだって、ドンと構えてるから。
そういう男らしいところが、たまらなく好きなのに。
どうしても、素直になれない。

