ため息をつきたいのに、それも我慢して、鏡に写る自分なんてとっくに忘れていた。

ただただ、編集長の過去が気になるばかり。

「出来上がり!撮影の時は、少しずつやっていくから。今日は、完成型を見てもらうね」

いつの間にかメイクは終わっていて、鏡に写る自分に驚いてしまった。

「これが、わたしですか…?」

「そうだよー。可愛いー!」

大満足の絵美さんに、呆然とするわたし。

本当に可愛い…。

夏のイメージにピッタリのブルーのアイシャドーに、口紅は赤系の発色のいいものだ。

「香乃子ちゃんて、メイクで印象がだいぶ変わるね。セクシーになったじゃない」

「そうですか?」

褒められると、素直に嬉しい。

しばらく変身した自分に見とれていた時、

「ごめん、遅くなった」

勢いよくドアが開いて、編集長が入ってきたのだった。