しばらく本屋で立ち止まっていたわたしは、落ち着きを取り戻したところで自宅へ向かった。
亮平から、電話はかかってきていない。
まだ、仕事中なのか、それとも愛想を尽かしたのか。
どちらにしても、着信のないスマホをしまうと、歩くスピードを速めた。
今夜は頭を冷やして、明日謝ろう。
アメリカと日本で離れ離れになるのは寂しいけど、亮平ならもっと上を見ることが出来るはずだから。
わたしが応援しなくてどうするのよ。
ようやくアパートへ着いた時、玄関の前にいる人影が見えて足が止まった。
「亮平?」
ドアに背中をもたれかけ、腕組みをして俯いていた亮平は、わたしの声で顔を上げた。
「遅かったじゃないか香乃子」
半分睨みつけるように見ている。
「何で、ここにいるの?」
呆然としていると、亮平が手を伸ばしてきた。
「鍵貸して。部屋の中で話そう」
「う、うん」
急いでバッグから鍵を取り出して渡す。
すると亮平は鍵を開けて、わたしの腕を引っ張ると中に入ったのだった。

