「平瀬さん、プロジェクトが続けられて、本当に良かったですね」
オフィスに戻ると、早川さんが興奮冷めやらぬ様子で声をかけてきた。
だけど、今は会話をする気分になれない。
無視をしてしまいカバンを手に取ると、さっさとオフィスを出た。
今日はもう帰ろう。
こんな状態じゃ、仕事にならないから。
「あ、香乃…」
途中、亮平ともすれ違い声をかけられたけど、視線を合わすことなくエレベーターに乗り込んだ。
「ホント、最低」
偉そうなことばかり言って亮平を説得しておいて、いざ遠距離になるかもしれないと思ったらダダをこねるなんて…。
何やってんだろう。
わたし…。
だけど不安なんだもん。
アメリカだよ?アメリカ!
飛行機で半日はかかるんだよ?
時差もあるんだよ?
せいぜい、メールのやり取りが精一杯なはず。
そんな状況で一年も?
もしかしたら、もっとかかるかもしれないのに…。
「そんなの耐えられない」
ビルを出て、当てもなくブラブラと歩く。
帰っても、一人じゃ考えごとばかりしそうでイヤだから。
しばらくショーウィンドウを眺めながら歩いていると、本屋に行き着いたのだった。

