すると、亮平は原稿を置いて、ようやくわたしを見た。
どこか険しい顔で…。
「本気だって。何でそんな事を言うんだよ」
「だって、そんな簡単に諦められることじゃないでしょ?亮平は、もっともっと仕事をしたくて頑張ってたんじゃないの?」
「それはそうだけど、別に今回のプロジェクトが全てじゃないから。これから、いくらだってチャンスはあるよ」
引きつった笑いに、亮平が全然納得していないのが分かる。
「でも、またいつチャンスがくるか分からないじゃない。完全に無くなったわけじゃないのに、どうしてチャンスを手放そうとするの?」
つい感情的になっちゃった…。
亮平を責め立てる言い方をしたことに後悔しながら、それでも気持ちを止められない。
「ねえ、わたしは仕事を頑張る亮平が好きなんだよ?それは早川さんも一緒で、チャンスを手放して欲しくないって思ってるの!」
「分かってるよ!」
それ以上わたしに話させまいとするかの様に、亮平は声を荒げた。
「分かってる。自分が情けないことを考えてるのは分かってるよ。だけど、迷っちゃいけないか?大事なものが増えちゃいけないのか?」
「え…?」
肩で大きく息をしながら、亮平はわたしを見つめる。
「迷ってるんだ。香乃子と離れたくない気持ちが大きすぎて…」
少し伏し目がちをした亮平に、かける言葉が見つからない。
「仕事なら、親会社へ移籍するだけが全てじゃない。そこに無理に執着する必要はないんだ」
「だけど、チャンスはたくさん増えるんでしょ?」
さっきよりは冷静になれて、ようやく穏やかに声をかけられた。
ただその分、気を抜いたら泣きそうだけど。
亮平のわたしを想う気持ちの強さが痛いほど伝わってきて、涙が出そう…。

