「分かってたの!?いつから?」

すっとんきょうな声を出すわたしに、早川さんはクスクス笑った。

「ちょっと前くらいからです。だけど、本当はもっと前から怪しんでました。平瀬さんは明らかに編集長寄りだし、編集長も平瀬さんを見る時の目が違ってましたから」

そうだったんだ…。

だけど、何でこんなにサバサバしてるんだろう。

「もう吹っ切れたの?亮平のこと…」

早川さんの前で、もう『編集長』は必要ない、そう思ってあえて名前で呼んでみた。

「まさか。全然吹っ切れてません」

「えっ!?」

まさかの宣戦布告?

青ざめるわたしに、早川さんはさらにケラケラ笑っている。

「平瀬さんて、素直なんですね。焦ってる、焦ってる」

「あ、当たり前じゃない!それでなくても、二人はキス…」

と言って、慌てて手で口を覆う。

蒸し返す気はなかったのに。

気まずい目で早川さんを見ると、笑顔を小さくしている。

「そうですよね。本当にすいませんでした。でも、あの夜スッパリとフラれましたし、編集長が平瀬さんをすごく好きだって、見ていて分かりますから。だから、心配しないでください」

「 早川さん…」

恋のライバルなんだから、彼女を嫌いになったっていいのに、それが出来ないのは彼女が潔いから?

とにかく、わたしには早川さんを嫌いになる理由が見つからなかった。