それにしても、沙耶さんは絵美さんのお得意様で、ここのホテルのオーナーと結婚するみたいだから、なんて世界は狭いんだろうと思う。
「修司さんは知ってるのかな?沙耶さんが来てるって」
チラリと早川さんに聞いてみると、小さく頷いている。
「さっき言いましたから。絶対に無視しなよって、伝えましたけど」
「そうなんだ…」
確かに、かなり修羅場だもんなぁ。
でも…。
ロクに話も出来ないまま別れたって言ってたし、もしかしたら修司さんは話がしたいって思ってるかもしれない。
でも、旦那さんになる人も、ここに来てるかもしれないわけで、簡単に声をかけられないかもしれないし…。
「あー、分かんない!」
つい口に出た言葉に反応して、亮平と修司さんがわたしを見た。
「香乃子ちゃん、何が分からないんだ?」
修司さんは目を細めて笑っている。
あのキス以来、初めて会ったけれど、何の違和感も感じない。
そんな修司さんを、何故だか切なく思えてきた。
「修司さん、ちょっと話したいことがあるんですけど、いいですか?」
それは、自然に出てきた言葉。
修司さんが、笑顔の裏に隠している辛い過去。
それを知ってしまったからには、知らんぷりなんて出来ないから。
思い切って沙耶さんとのことを聞いてしまおう。

