新幹線で約一時間の旅。
今日は、修司さんに招待されているパーティーの日だ。
週末だからか、新幹線の中は家族やカップルで溢れていて羨ましくなる。
これが亮平とのプライベートな旅行なら、どんなに楽しかっただろう。
一時間、そんなことを考えていたけど、ホテルに着いてすぐに不満は吹っ飛んだ。
「すごーい!アンティークだ!」
ホテルというから、つい一般的な建物を想像してたけど、外観はまるで中世のヨーロッパのお城みたいだ。
「これがウリのホテルなんだよ。今度は取材で来たいよな?」
すっかり『編集長』の顔になった亮平は、わたしとは違った興奮度合いで辺りを見回している。
わたしは、いつか亮平とプライベートで行きたいって思って言ったのに。
もちろん、早川さんもいるから口には出せないけど。
その早川さんは、ホテルを見上げながら険しい顔をしている。
「早川さん、どうかしたの?」
気になり声をかけてみると、我に返って笑顔を見せてきた。
「何でもないです。行きましょうか?」
「うん…」
何か気になるけど、まあいいか。
それにしても早川さん、亮平といろいろあっても普通に接してるんだから感心する。
きっと、気まずいはずなのに。

